気圧波 家を吹き飛ばす

河北新報 平成25年12月30日
TSUNAMI温故知新 首藤伸夫[29]

気圧波 家を吹き飛ばす

 1896年(明治29年)6月15日夜、岩手県大槌町では日清戦争の凱旋祝勝会があり、
花火大会が開かれていた。6月24日の日刊紙「岩手公報」は、次のように伝えている。
「4発目の花火が見事に打ち上がった時、浜辺の方で『津波だ』と声がした。慌てて海面を見ると、
4.50丈(約13.6メートル)の波が巻き、巻きやってくる。
その早いことは目にもとまらぬほど。(中略)その波が来る時、手を上げ、まくり下ろすかのように、
家や倉の前で一まくりした。すると、波は触りもしないのに、
空気の圧力で家も倉も皆、倒された。大砲よりものすごかった」

 1933年に発生した昭和三陸津波で、この現象はアオリ風と呼ばれた。
地震研究所彙報(いほう)の記録によれば、宮古市姉吉で
「波は音と一緒に家より高く来ていた。家は風圧のため倒れた」。
岩手県山田町船越では「波の家に当たらない前に、家の垣根などがはじきとばされた」と記されている。
 元田老町長の東信一氏に聞いた体験はこうである。「津波より先に風が来て、屋根や土蔵が飛ばされた。
第1波のとき家より100メートル位離れた所で木につかまっていたら、何かに足を打たれた。
振り返ってみたら家は立っていた。足を打ったのは風だった」
 陸に来た津波だけではない。発生した瞬間に、津波は空気を動かす。海底に押し上げられ、
急激に鉛直変位した水面により、津波の山になった所では、空気は圧縮され、谷となった所では膨張する。
この気圧の変動が気圧波となって広がる。
 この際、重力音波と呼ばれる音を発するが、人間の耳には聞こえない超低周波音である。
しかし、象には聞こえるらしい。

 2006年3月29日の朝日新聞によると、04年のスマトラ沖地震の津波が、
タイの東沿岸カオラックを襲う約10分前、客待ちで草をはんでいた2頭の象が、耳を大きく開いたかと思うと、
突然丘の上に向かって走りだした。05年11月7日のNHK「地球ふしぎ大自然」は、
スリランカでも津波が来る直前に、象が高台に移動して難を逃れたことを紹介している。
 もちろん、マイクなら超低周波音を捕まえられる。スマトラ沖地震でも、
インド洋のディエゴ・ガルシア環礁に設置されていた包括的核実験禁止条約核爆発監視用のマイクが、
津波に伴う音波を記録している。
 こうした気圧波は音速と同じく、毎秒約320メートルで伝わる。太平洋並みの深さ4000メートルの
海を伝わる津波は毎秒200メートル程度だから、気圧波の方が速い。
数値計算で確認できるため、素早く捕えることで津波予報に使えるかもしれない。
(東北大名誉教授)

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